金融機関の変更はメリットもありますが、変更まで時間がかかったり、いくつか注意点もあります。
記事前半では、金融機関変更のメリットやデメリット、金融機関変更の手順、記事後半では、金融機関変更のタイミング、NISA口座の開設と金融機関選びなどを解説します。
Contents
新NISAの概要と特徴
新NISA制度の基本的な特長
新NISAとは、一般口座や特定口座の非課税口座とは異なり、NISA口座で株や投資信託に投資して利益が発生しても非課税になる制度です。
新NISA口座は1人1口座(年単位で変更可)になります。
また、旧NISAと新NISAの口座は、別の金融機関で保有できます。
旧NISAで保有している商品は、非課税保有期間まで旧NISA口座で保有することができますが、新規買付はできません。
旧NISAとの違い
年間投資枠が最大360万円に拡大
旧NISAの年間投資枠の上限は、つみたてNISAが40万円、一般NISAが120万円でしたが、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円と拡大
非課税保有期間が無期限
一般口座や特別口座では利益に対して約20%の税金がかかるのが、NISA口座は利益に対して一生涯税金がかかりません。
非課税保有限度額が最大1,800万円に拡大
旧NISAはつみたてNISAが800万円、一般NISAが600万円でしたが、新NISAは1,800万円(成長投資枠1,200万円)
非課税枠の再利用ができる
非課税保有限度額が最大1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)に拡大、売却した分(買付価格)の非課税枠が翌年以降復活し、再利用できます。
制度の恒久化
投資可能期間が恒久化されました。
旧NISAの非課税保有期間はつみたてNISAが20年、一般NISAがは5年でしたが、新NISAは非課税保有期間や制度が無期限なので、より長期的な運用が可能になりました。
新NISAの対象金融商品
新NISAにはつみたて投資枠と成長投資枠の2つの枠があります。
つみたて投資枠の対象金融商品
長期の積立・分散投資に適した、金融庁の基準に満たした投資信託、ETF(上場投資信託)
投資信託にはインデックス型とアクティブ型とあります。
インデックス型に比べて、アクティブ型の方は運用のプロが、市場や企業を独自の観点で徹底的に調査・分析して選定しているため、運用コストが高い傾向があります。
アクティブ型 日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など、特定の指数上回る運用を目指す投資信託
成長投資枠の対象金融商品
上場株式(国内・外国株)、公募株式投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)
※整理・監理銘柄や一部の投資信託等は対象外です。
金融機関変更のメリットとデメリット
金融機関を変更するメリットとは
投資できる商品の選択肢が増える可能性がある
主要証券会社4社の取扱数比較
証券会社 | SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 | auカブコム証券 |
つみたて投資枠 | 248本 | 238本 | 233本 | 236本 |
成長投資枠 | 1,263本 | 1,241本 | 1,169本 | 1,104本 |
参照:SBI証券
総合証券(店舗型証券)と銀行のつみたて投資枠の取扱本数は20本程度と、大手ネット証券の方が圧倒的に多いです。
- サービス内容が充実する可能性
金融機関によって、取り扱っている金融商品だけでなく、サービスやサポートの内容もさまざまです。
例えば、クレジットカードを使って積立投資を行うことでポイントをもらえたり、投資に使える金融機関や、取引や口座管理が簡単にできるアプリを提供しているところもあります。
商品の最低購入金額も金融機関によって異なります。
金融機関を変更することで、より充実したサービスやサポートが受けられ、使いやすさが向上する可能性があります。 - 取引コストが下がる可能性がある
ネット証券など手数料無料の金融機関もありますので、確認することも大事です。
金融機関変更のデメリットと注意点
- 金融商品の移行はできない
NISA口座の金融機関は変更できますが、変更前の金融機関にあるNISA口座で保有している金融商品を、新しい金融機関のNISA口座へ移行することはできません。 - 金融商品を1度でも購入すると翌年まで変更ができない
変更したい年の1月1日以降にNISA口座を通して金融商品を購入すると、その年分の金融機関変更はできません。その年の10月1日以降、翌年分からの変更申請をする必要があります。
特に、1月分の積立は、積立設定の解除のタイミングに注意してください。
よくある金融機関変更に関する質問事項
NISA口座は1人1口座のため、別々の金融機関では利用できません。
1つの口座で2つの枠を併用します。
できません。
他の金融機関へ移管はできません。
同じ商品がある場合は、変更前の金融機関で保有している商品を一度売却し、変更後の金融機関で同一の商品を購入することはできます。
金融機関変更の具体的な手続き手順
ここからは、変更手続きの流れを解説します。
変更手続きの流れと必要なステップ
手続きは、WEBサイトまたは書面で行います。
変更前の金融機関の手続き
1.NISA口座を開設している金融機関で、他社への変更手続きを行う
2.「金融商品取引業者等変更届出書」が届くので、必要事項を記入して返送
※楽天証券は、変更手続き後、「金融商品取引業者等変更届出書」は届かず、「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」が届きます
3.勘定廃止通知書が届く
変更前の金融機関に提出した「金融商品取引業者等変更届出書」に問題がなければ、「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」が送付されます
書類は新しい金融機関に提出する(入力する)ため大切に保管してください。
変更先の金融機関の手続き
- 変更先の金融機関で、NISA口座開設の手続きを行う
総合口座を持っていない場合は、開設しておくとスムーズです
楽天証券など、同時に開設できる所もあります - 変更先の金融機関から「非課税口座開設届出書」が送付される
- 「非課税口座開設届出書」を提出する
変更先の金融機関から「非課税口座開設届出書」が送付されたら必要事項を記入し、「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」と「本人確認書類」、「非課税口座開設届出書」を一緒に変更先の金融機関に返送します
書類に誤りがなければ、変更先の金融機関で新NISA口座の開設が完了となります。
書類での手続きの場合、「勘定廃止通知書」が届くまで3週間程度かかりますので、余裕をもって手続きを行ってください。
「勘定廃止通知書」:変更前の金融機関のNISA口座で購入した商品を、引き続きNISA口座内で管理するために発行される通知書
「非課税口座廃止通知書」:変更前のNISA口座を廃止し、NISA口座内で保有していた商品を売却するか課税口座に移管する際に発行される通知書
保有している商品を引き続き変更前のNISA口座で保有したい場合は、「勘定廃止通知書」を選択しましょう。
手続きに必要な書類一覧
金融機関変更の手順にも記載していますが、必要書類は以下の3点です。
- 勘定廃止通知書または非課税口座廃止通知書
- NISA口座を利用している金融機関より「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」
- 本人確認書類(マイナンバー未提出の場合は個人カードや通知カード)
金融機関変更のタイミングと注意点
金融機関変更が可能なタイミング
NISA口座の金融機関変更を希望する場合は、多くの金融機関では前年の10月1日から当年9月末までに手続きを完了させる必要があります。
例えば2025年にNISA口座の金融機関を変更したい場合、2024年10月1日から2025年9月末までに、手続きを行います。
10~12月に手続きをされた場合、翌年の変更になります。
変更を希望する年の1月1日以降に一度でもNISA口座での買付をすると、その年分の金融機関変更ができなくなってしまう点にも注意が必要です。
1月~9月 | 10月~12月 | |
今年の取引がない場合 | 今年分(当年分)の変更受付期間 (9月中旬頃までに手続き) | 翌年分の変更受付期間 10月1日より受付開始 |
今年の取引がある場合 | 受付不可 | 翌年分の変更受付期間 10月1日より受付開始 |
変更時の取引と資産保有の注意点
金融機関変更のデメリットと注意点でも解説していますが、変更前のNISA口座で保有している商品は、変更先のNISA口座に移すことはできません。
また変更前のNISA口座で保有している商品の売却はできますが、買付ができません。
新NISAの保有残高をそのままにして、他社で新NISAを取引するときには勘定廃止を選択してください。
勘定廃止後は買付はできませんが売却は可能です。
ネット証券を利用したスムーズな変更
楽天証券やマネックス証券での口座変更
楽天証券やマネックス証券にNISA口座を変更する場合の流れを解説します。
楽天証券に変更する場合
楽天証券では、2024年10月からオンライン入力で完結できてしまいます。
楽天証券の総合口座を持っていない場合、NISA口座をまとめて申込みも可能。
- NISAページへログイン後、NISA口座申込画面で「他社から乗り換え・再開設」ボタンをクリック
- NISA口座申込/受付画面で廃止通知情報を入力します
入力内容に誤りがないことを確認のうえ、「この内容で確定する」ボタンをクリック
マネックス証券に変更する場合
マネックス証券の総合口座を持っていない場合は、総合口座を開設後、NISA口座の変更手続きを行います。
- マネックス証券WEBサイトにログイン 「NISA口座開設手続き書類」を請求
保有残高・口座管理→各種口座開設状況をクリック→「開設/状況確認」をクリックし、請求
※2018年以降にマネックス証券のNISA口座を廃止している場合は、WEBからは手続きできません - 変更前の金融機関から届いた「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」と、マネックス証券から届いた「NISA口座開設必要書類提出票」、「本人確認書類」を返送します
マイナンバー確認書類:個人番号カード、通知カード、発行から6ヶ月以内の住民票の写し(マイナンバーが記載されたもの)のいずれかを提出。
すでにマイナンバーの登録が完了している場合は、提出不要です。
よく利用されるキャンペーンの活用方法
NISA口座を開設することで、お得なキャンペーンを開催されている場合があります。
現在キャンペーン中のものを、いくつかピックアップしました。
楽天証券 楽天カード主宰NISAデビュー&のりかえキャンペーン | |
キャンペーン内容 | 条件達成で5,000ポイント |
エントリー期間 | 2024年9月27日(金)~2025年2月28日(金) |
マネックス証券 毎月最大2,000ポイント!NISAでポイントザクザクプログラム | |
キャンペーン内容 | NISAで投資信託を月間合計1万円以上積立買付し、同じ月の「日本株(現物)、米国株(現物)、ON COMPASS、マネックス・ゴールド」の買付でマネックスポイントをプレゼント |
エントリー期間 | 2024年10月1日(火)~2025年9月30日(火) |
SBI証券 NISAでやるならSBIでGO! NISA応援キャンペーン | |
キャンペーン内容 | NISA口座開設または他社からNISA口座乗り換え NISA口座開設(乗り換え)&クイズ全問正解+エントリーで2,000ポイント |
NISA口座開設完了&エントリー期間 | 2024年10月1日(火)~2024年12月31日(火) |
その他にもキャンペーンが開催されている金融機関はありますので、チェックしてみてください。
NISA口座の開設と金融機関選び
NISA口座開設の基本手続き
NISA口座開設の手続きは、総合口座も開設する必要があります。
こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
初心者でもできる新NISAの始め方!おすすめ商品や運用方法も金融機関選びのポイントと比較方法
金融機関選びのポイント
- 購入したい商品の取扱いがあるか
- 手数料
- ネット証券の場合、クレカ積立でもらえるポイント還元率
取扱商品数や銘柄は金融機関によって異なりますので、購入した商品があるかがポイントです。
つみたて投資枠の商品(投資信託)は、どの金融機関も購入手数料は無料ですが、成長投資枠で購入する場合は、購入手数料(一部無料)がかかります。
しかし、証券会社では投資信託などの一部商品は購入手数料が無料、ネット証券では投資信託や株の売買手数料を無料にしているところもあります。
金融機関 | 成長投資枠 | 備考 | |
投資信託 | 株式 | ||
楽天証券 | 無料 | 海外株式(米国株以外)無料 | |
SBI証券 | 無料 | 海外株式(米国株以外)無料 | |
マネックス証券 | 無料 | 実質無料 | |
auカブコム証券 | 無料 | 無料 | 海外株式(米国株以外)取扱なし |
松井証券 | 無料 | 無料 | 海外株式(米国株以外)、単元未満株取扱なし |
大和証券 | 有料(一部無料) | 有料 | |
野村證券 | 有料(一部無料) | 有料 | |
みずほ証券 | 有料(一部無料) | 有料 | |
東京三菱UFJ銀行 | 有料(一部無料) | 取扱なし | |
三井住友銀行 | 有料(一部無料) | 取扱なし | |
みずほ銀行 | 有料(一部無料) | 取扱なし | |
りそな銀行 | 有料(一部無料) | 取扱なし |
2024年10月22日調べ
その他、クレジットカードで積立をすると、積立額に応じてポイントがもらえるネット証券もあります。
詳しくはこちらの記事にまとめました。 新NISAクレカ積立とは?始め方を初心者向けに解説
NISA口座開設の際に気をつけること
開設の際に気を付けることは、複数のNISA口座は作れないため、新NISA口座が別で開設しているのに他の金融機関で口座開設手続きを行っても審査に通りません。
金融機関でNISA口座を開設している場合、自動的に新NISA口座が開設されるで、注意してください。
旧NISAからの移行と変更
旧NISAから新NISAへの移行手続き
旧NISA口座を開設している場合、新NISA口座は同じ金融機関で自動的に開設され、旧NISAと新NISAは別の枠で管理となります。
旧NISA口座とは別の金融機関で新NISA口座を開設する場合は、変更(移行)手続きが必要になります。
- 利用している金融機関で、他社への変更手続きを行う
商品はそのまま保有するか、売却をする - 変更する金融機関で口座開設手続きを行う
移行時の注意点と資産管理方法
旧NISA口座で保有している商品を新NISAに移行することはできません。
旧NISAで保有している商品を新NISAに移行したい場合、一度売却して、新たに購入し直す必要があります。
旧NISA口座で保有している商品は、非課税保有期間を過ぎてしまうと、課税口座に移ってしまいます。
元の口座管理のポイント
旧NISA口座で保有している商品は、そのまま保有することができ、売却はいつでもできますが、新たに購入することはできません。
旧NISAの非課税保有期間は、一般NISAが5年、つみたてNISAが20年ですので、保有している商品は運用を継続できます。
注意したポイントは、非課税保有期間を過ぎても売却しなかった場合、課税口座に自動的に移されて税金がかかってしまいまう点です。
金融機関変更の実体験とアドバイス
実際の金融機関変更事例
楽天証券でNISA口座を開設手続きを行って審査待ちでしたが、開設不可となってしまいました。
他の金融機関でNISA口座を開設した記憶がなく、普通に審査通過すると思っていましたが、落ちた理由は他の金融機関でNISA口座を開設していました。
どこの金融機関でNISA口座を開設していたかは、e-taxのマイページで調べる事ができたので、すぐに解決しました。
楽天経済圏なのと、もとも楽天証券の総合口座を開設していて、取引画面も使いやすかったので面倒でしたが、現在NISA口座を開設している金融機関で変更手続きを行い、再度楽天証券で開設手続きを行うことにしました。
書類が届くまでの日数は約1週間、NISA口座開設手続きの審査にかかる日数は約1~2週間と、時間がかかります。
金融機関を変更するにはいろいろな理由がありますが、すでにNISA口座を開設していた覚えがなく、新たな金融機関で開設手続きを行って審査で落ちたという、私のような例もあります。
手続き完了までの時間管理
手続き完了後、開設できるまでの期間はオンラインで申し込む場合、トータルすると約2~3週間です。
変更手続き後、書類が届くのに、約1週間かかります。
その後、変更する金融機関で口座開設手続きを行い、NISA口座開設の審査結果がわかるまで、約1~2週間かかります。
楽天証券など、同時開設できる所もありますが、NISA口座は総合口座を開設していないと作れないので、事前に総合口座を開設しておきましょう。
まとめ
新NISAの利用を考える上で、金融機関の変更は重要なポイントです。
金融機関の変更にかかるおおよその日数は、
変更前の金融機関に金融商品取引業者変更届出書を提出後、約1~2週間
その後、新しく口座開設を申し込んでから、1~2週間
変更のタイミングは人それぞれですが、変更する際は1度でもNISA口座で取引をすると、その年は金融機関の変更はできません。
また、口座開設や変更には手続きが必要なため、余裕を持った計画が望ましいです。
金融機関のキャンペーンや新規口座開設特典も見逃せませんので、賢く利用しましょう。
積極的に情報を収集し、自分に合った金融機関を選ぶことが大切です。
コメントを残す